―世界と戦っていた時代、お食事はどのように摂っていましたか?
『現役時代、食べることと走ることは同程度に重要視していました。私は朝夕の2食でしたが、栄養士さんがついて、タンパク質、ビタミン、野菜、炭水化物を、しっかりとまんべんなくバランスよく摂るようにしていました。貧血などの予防のために、レバー、ひじき、納豆は毎食必ず食卓に出ましたね。』
―現役時代は食べた分だけ練習で走って消費しつくし、また食べる日々と拝見しましたが、「味わう」というよりも「補給」の意味合いが大きかったのでしょうか。
『いえいえ、もちろん「補給」の面も大事ですが、それよりも「楽しみ」でしたね。現役時代の生活は “走って、食べて、寝る” だけのシンプルなものだったので、食べることは最大の楽しみでした。たとえば夜のメニューがカレーの日には、練習の最後のジョギングでは「カレーッ!カレーッ!」と掛け声をかけて走っていましたね(笑)。
お休みの日は、お寿司だったら50貫、お肉だったら2キロぐらい食べていました。多く走る日ですと1日80キロは走りますから、しっかり補給しようという意識は強かったと思います。』
―すごいボリュームですね。やはりマラソンの練習はエネルギーを消費するのですね。
では、大会前はどんな食事を召し上がっていたのですか。
『大会の前日と前々日は、私は炭水化物を中心に摂っていました。メニューは2日間とも夜はうどんの中にお餅を入れた力うどん。それをおかずにしてご飯をたくさん食べるという食事です。炭水化物がエネルギーの源となって体に蓄えられるので、とにかく炭水化物を中心としたメニューでした。
ただし、これは選手によって違い、私のように炭水化物中心に摂る選手もいれば、普段と変わらない選手もいます。自分に合った食事がわかるようになったら、それに従うのがいちばんです。ですが、いつもより多めに炭水化物を摂取することは頭に置いておくといいかもしれませんね。』
―あの走りは「力」うどんが支えていたのですね。名前もいいですね。
ところで、子どもの頃からの大好物はなんですか。現役時代も召し上がっていたのでしょうか。
召し上がっているとしたら、練習のスイッチを入れるためですか、「ご褒美」ですか。
『小さい頃からの大好物と言えば、やはり炭水化物系です。うどん、ごはん、スパゲティはよく食べていました。好物が練習のエネルギー源になるもので良かったです。
そして、ご褒美というとお寿司が多かったですね。何故かというと、現役時代は毎年半年間ほどアメリカのボルダーで合宿をしていましたが、そこには海がなく、なかなかお魚を生で食べることができませんでした。また、大会前は生ものにあたってしまう恐れがあり、摂らないように心がけていたので、終わった後は「あぁ、生ものが食べたいな!」という思いがすごくありまして…。まさにご褒美メニューですね。』
体のエネルギーだけではなく、ご褒美などで心のエネルギーも補給することはモチベーションに繋がりますし、生活の中に「楽しみ」というリズムが生まれるのがいいですね。これは読者の皆さんも、すぐに取り入れられるのではないでしょうか。次回は、現役引退後の食生活などについて伺います。どうぞお楽しみに。