21世紀型中学受験セミナーレポート 第1回 体の秘訣 睡眠の質が決め手〜脳と香り〜 後編
9月14日、ライズTOKYO協賛のイベント「21世紀型中学受験 モチベーションアップの3つの秘訣!」の第1回目のセミナーが開催されました。このセミナーは長い受験生活を乗り越えようとしている中学受験親子に、「体の秘訣」「学の秘訣」「心の秘訣」の3回にわけて、各界のトップ講師陣を迎え、対談型式でそのノウハウを聞くというものです。記念すべき1回目は、アロマ調香デザイナーの齋藤智子氏と、「睡眠負債」で流行語大賞を授賞した脳科学者である枝川義邦氏のお二人を迎え、「体の秘訣 睡眠の質が決め手〜脳と香り〜」と題して講演が行われました。会場には約70名もの中学受験を控えた保護者のみなさまが集まり、熱心に耳を傾けていました。
モチベーションとは何か
枝川:
ここからはモチベーションややる気の話をしたいと思います。モチベーションは英語で分解すると、モチーブ+アクション。つまり、何かを行動を起こすための、動機、行動を起こすためのスイッチと考えられます。
枝川:
モチベーションは3段階に分けて考えると分かりやすいですね。まず最初の段階は、ご飯を食べたいといった本能的な欲求です。次の段階は、報酬が目的でがんばれるような段階。交換条件で子どもの気を引こうというのはこの段階です。そして、自分自身がしたいことにスイッチが入ってやる気が湧き出てくる段階が続きます。やる気が自ら湧き出る段階までいくと素晴らしいのですが、ほとんどの場合はアメやムチを使ってでもやる気を出さなきゃ、となりがちじゃないですか?「テストでいい点とったら○○してあげる」といった交換条件を出したり、この方法は慣れが起こりやすいのと、楽しみがなくなってむしろモチベーションが下がってしまうという実験結果もあり要注意です。お子さんの場合でも、外部から与えられる報酬とは関係なく自発的にやる気を上げているケースもあるので、見極めが大切です。
やる気のスイッチはどこにある?
枝川:
じゃあ、やる気のスイッチはどこにあるんだ?となりますが、脳科学的にいうと、やる気のスイッチをいれる鍵は報酬系の神経ネットワークとドーパミンが握っています。脳の中には「報酬系の神経ネットワーク」と呼ばれるネットワークがあり、それが活発に働くようになると、ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が放出されます。ネットワークの中にある側坐核(そくざかく)という場所でドーパミンが増えると報酬に感じたり、やる気が出てきたりします。このドーパミンは、ハードルを越えて課題を解いたらご褒美をもらえると“思ったとき”に、たくさん分泌されます。つまり、自分が本当に欲しいご褒美が手に入るという予測が出来ている状態を作ればよいので、目の前の課題を解いたらその後にどんないいことが待っているのか、ということを、具体的にイメージするのはいいことです。ただしドーパミンを分泌する細胞には慣れが生じやすいという問題があります。ときには変化球も投げてみるのが、脳の中でドーパミンを出し続けるコツかもしれません。
取り組む課題の難易度も大事です。脳科学でも心理学でも明らかにされているのは、その人が一生懸命にチャレンジしたときに、超えられる確率が50%となるハードルが、脳の中で一番やる気を高めるということです。しかし同じレベルではいずれ退屈してしまいますから、状態を見極めてどんどん課題の難易度を上げていくと、やる気が高い状態が続きやすくなります。ゲームなんかは、まさにそのように作られているんですね。夢中になりやすいわけです(笑)
脳が健康であることが大事。そのためにいい睡眠が必要
枝川:
やる気の源が脳内の報酬系ネットワークであることは先ほどご紹介しましたが、つまり脳が正常に機能することは、やる気にとっても大事だということです。そこで非常に大切になるのが睡眠です。
睡眠を考えるときにまず気にしたいことは、1日24時間のリズムをきちんと維持すること。このリズムは「サーカディアンリズム」と言われますが、つまりおよそ1日のリズム、太陽のリズムです。だから光をうまく使ってリズムを整えていくことが大切です。睡眠を取っている時間は、1日24時間の一部分なので、起きている時間と眠っている時間は表裏一体なのですね。つまり日中の過ごし方は、夜の睡眠の質に影響を与えるし、夜の睡眠は次の日の昼間のパフォーマンスに影響を与え、それがまた次の日の睡眠に影響を与える。このように全て関係し合っているので、24時間のリズム視点で全体を見ることが大切なのです。
子どもの睡眠負債は健康だけでなく学力にも影響
枝川:
アメリカの睡眠医学会によれば、妥当な睡眠時間は、6歳から13歳では7時間から12時間、せめて9時間から11時間は眠ることが推奨されています。充分な睡眠が満たされないと、子どもであっても睡眠負債を抱えてしまいます。すると脳や身体に影響が及ぶ可能性が高くなります。例えば、太りやすくなったり、免疫力が下がるので風邪ひきやすくなったり、アレルギーも出やすくなります。集中力、記憶力の低下、計算ミスなど単純ミスが増えること、怒りやすくなったり、今しなくていいことがやめられないなどの依存傾向も強まったりします。子どもの場合は成長や発達への影響が懸念されていて、学力への影響についても、成績の良かった生徒は、成績の悪かった生徒よりも早く寝て、長く眠っていたという研究結果も知られています。
睡眠に必要な3つのホルモンを意識しよう
枝川:
いい睡眠を取るために、ぜひ覚えておいて欲しいホルモンが3つあります。メラトニン、成長ホルモン、コルチゾールです。
メラトニンは眠気ホルモンです。メラトニンが脳の中にたまってくると眠気を覚えます。眠る前に増えて、起床にむけて減少していくんですが、メラトニンが脳の中で出にくい状況を作ると、寝付けない、深く眠れない、夜中に途中で起きてしまうということにつながります。
成長ホルモンは、子どもの場合は、読んで字のごとく成長を促します。体の成長だけでなく、脳の発達や、脳の発達に伴った精神の発達なども成長ホルモンが担ってくれています。睡眠中に分泌される成長ホルモンのほとんどは寝入ってすぐの深い睡眠中に分泌されるので、最初の3時間程度の眠りの質は重要です。
コルチゾールはストレスホルモンと言われ、起きる3時間くらい前から体を起こすために増えていきます。軽いストレスの予行演習をすることで、睡眠中に低下した血圧を上げてくれたり、日中に受けるであろう精神的なストレスのインパクトを軽減してくれたりしています。
この3つのホルモンのバランスはとても大事なので、自然に分泌されるのを邪魔しないような生活習慣を心がけたいですね。
アロマを気軽に取り入れて
枝川:
寝る前のお風呂は、なるべくぬるま湯につかっていただいて、一旦体温を上げると眠りやすくなるのですが、そのときはアロマを活用していただくと、よりリラックスできていいですね。
齋藤:
そうですね。例えば、お風呂でゆっくりリラックスするのもとてもいいと思います。お風呂に入れる場合は、一般的な湯船の場合、3〜5滴ほどでいいと思います。ちなみに、精油はそのまま体に付くと刺激が強いこともあるので、ホホバオイルやはちみつ(はちみつアレルギーの方は避けてください)など、何かで希釈をしてくださいね。また湯気で十分温かくなるので、小皿にアロマをいれてお風呂場の邪魔にならないところに置くのもいいですね。
枝川:
最後に、今回のテーマにあったおすすめの精油をご紹介いただけますか。
齋藤:
おすすめの精油はたくさんありますが、安眠、リラックスなど、自律神経、副交感神経を優位にしてくれる成分が多く含まれるのは、ラベンダー、オレンジスイート、ベルガモット、スイートマジョラムなどでしょうか。ベルガモットは私がアロマの世界に入るきっかけになった香りなのですが、抗うつ作用といって、不安なときの心のサポートが得意なアロマです。柑橘類のやわらかくて甘い香りは、子ども達も、シニア世代も、好きな方がとても多い香りなのでオススメです。
枝川:
今回は脳の働きと香りがもたらす効果にフォーカスしながら、モチベーションアップの秘訣をお話しました。受験は長期戦ですから、メリハリをつける意味でもぜひ活用してみてください。
健康睡眠ミニレクチャー 「24時間のデザインを意識しよう」
「日本において、親の夜型化や女性の社会進出の影響から、子供の睡眠不足は深刻な状況です。」と説明するのは、RISE睡眠コンシェルジュの青野。セミナーの最後に実施したミニレクチャーでは、質の高い健康睡眠をとることの大切さについて、特に子供の場合、身体だけでなく精神面の発達に大きく影響するという事実、また、睡眠の質を高めるには、自然な寝姿勢と寝返りをサポートしてくれる高反発素材のマットレスが優位であるということをお伝えしました。子供の睡眠の質改善には、まず親御様に高い意識を持っていただくことが大切です。会場後方に設置した2タイプのRISEの高反発マットレスを、多くのみなさまに体験していただきました。RISEはこれからも、健康睡眠を実現する高反発マットレスを通じて、受験を控えたお子様と親御様の大切な時間をサポートして参ります。
展示した製品 スリープオアシス マットレス
(http://www.risetokyo.jp/f/series/sleep_oasis)
展示した製品 K18 ラテックス360 マットレス
21世紀型中学受験 モチベーションアップの3つの秘訣
第1回 「体の秘訣 睡眠の質が決め手~脳と香り~」 前編
第1回 「体の秘訣 睡眠の質が決め手~脳と香り~」 後編
第2回 「学の秘訣 親の関わり合い方と勉強法」
第3回 「心の秘訣 親子のメンタルと運の引き上げ方」
PROFILE 枝川 義邦
えだがわよしくに/早稲田大学研究戦略センター教授。東京大学大学院を修了して薬学の博士号、早稲田大学ビジネススクールを修了してMBA(経営学修士)を取得。早稲田大学スーパーテクノロジーオフィサー(STO)の初代認定も受ける。脳のしくみや働き、人間の行動などについての執筆や講演、テレビ出演や雑誌取材も多い。2015年度早稲田大学ティーチングアワード総長賞、2017年度ユーキャン新語・流行語大賞を受賞。一般向けの著書には『「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣』(明日香出版社)、『記憶のスイッチ、はいってますか』(技術評論社)などがある。
PROFILE 齋藤 智子
さいとうともこ/京都で10代続く家に生まれ、幼少期より伝統的な香り文化に親しむ。「本物の薫りだけが、人の心を動かす」を軸に、天然精油にこだわり調香を行う。これまで制作した香りは5000種以上。調香のプロを養成する傍ら、美術館、コンサートなどでのアロマ空間演出や、企業の香りコンサルティングなど国内外で香りのプロデュースを手がける。2017,18年のミラノサローネにて、ミラノデザインアワード受賞展示、Panasonic Designで調香を担当し好評を得た。