少しずつの睡眠不足が積もっていき、借金のようにどんどん膨らんでしまうことを「睡眠負債」と言います。世界的にみても睡眠不足傾向にある日本では、多くの大人が睡眠負債をかかえているとされており、たびたびテレビなどでも取り上げられています。
そして近年深刻な問題になっているのが、子供の睡眠負債。日本では、子供もまた世界的にみて睡眠時間が短い傾向があるとされているのです。テレビゲームが一般化していることや、ストレスの多い現代の子どもたちの睡眠トラブルについて、紹介していきます。
子どもの睡眠不足の原因
子どもの就寝時間は、どんどん遅くなってきていると言われています。その原因は、塾や習い事で帰りが遅くなることや、テレビやゲームの影響、仕事の都合で親の帰りが遅いこと、受験などのストレス等、多岐にわたります。そして、毎晩遅くまで起きていて睡眠リズムが崩れたことにより、早く寝ようと思っても眠れないという「睡眠障害」を引き起こしてしまう例も後を絶ちません。
では、そもそもなぜ子どもにはじゅうぶんな睡眠時間が必要なのでしょうか。
子どもの成長に質の良い睡眠が必要な理由
睡眠には、眠りの浅い「レム睡眠」と眠りの深い「ノンレム睡眠」があり、成長ホルモンは深いノンレム睡眠時に多く分泌されることがわかっています。幼児期はノンレム睡眠の時間がとても長く、成長ホルモンが多く分泌される時期。この時期にしっかり睡眠をとることが、脳や体の成長には必要とされています。
子どもが睡眠負債をかかえるとどうなる?
人間の体には、24時間をきざむ「体内時計」と言われるリズムを持っており、「概日リズム」と言われています。しかし、何らかの理由により睡眠リズムが崩れて決まった時間に寝たり起きたりができなくなってしまうことを「概日リズム睡眠障害」といいます。
一時的なものでは「時差ボケ」などがあり、慢性的なものでは「交代勤務性睡眠障害」「非24時間睡眠覚醒症候群」と呼ばれるものなどがあります。子どもが夜更かしによりかかりやすいのは、「非24時間睡眠覚醒症候群」。体内時計が24時間より長いサイクルできざまれるようになってしまい、寝る時間がどんどん遅くなっていく症状です。寝不足のまま学校に行くため、日中は眠気や頭痛、体の不調などを訴えるようになり、次第に朝起きることができなくなって、不登校になるケースもあります。
小学生がここまで重症化するのは、幼児の頃からゲームやテレビなどによる睡眠負債が少しずつ蓄積されていったことが大きく影響していると考えられています。また中高生がこのような症状で悩まされるのは、塾通いなどで徐々に寝る時間が遅くなっていったためということも多いそうです。
睡眠リズムを取り戻す方法
幼児期は、大人の生活の影響で夜眠れないということも多い時期です。就寝時間が近づいたら、できれば大人の用事は少し中断しましょう。部屋の照明を少し落として本を読む、リラックスできる音楽をかけるなどの方法で、徐々に眠りに誘導します。
小学校高学年から中高生になると、習い事や塾、勉強など物理的な要因で睡眠時間を確保するのが難しくなることも多いでしょう。その場合は、睡眠負債をためないよう、時間がある日はできるだけ早く寝る、勉強は朝や昼間に回す等の工夫によって、忙しい日の睡眠不足をできるだけ早く解消することが重要です。なお、週末にまとめて寝るというのは、睡眠リズムを狂わせてしまうため逆効果を生むとされています。
まとめ
現代の子どもは、よほど意識して過ごさない限り、睡眠不足になりがちです。子どもが適切な睡眠時間を確保できるよう、大人が気を配ることが重要です。
そして、万が一睡眠障害が重症化した場合は、すぐに医師の診察を受けることをおすすめします。今は、「こども睡眠外来」「子どもの睡眠と発達医療センター」といった専門外来を設けている機関もありますので、ぜひ相談してみてください。