21世紀型中学受験セミナーレポート 第2回 学の秘訣 親の関わり合い方と勉強法
10月12日(金)、fabbit 青山にて開かれた中学受験メンタルトレーニング協会主催の「21世紀型中学受験 モチベーションアップ 3つの秘訣!」セミナー。1回目の「体の秘訣」に続き、2回目のテーマは「学の秘訣」。一般社団法人教育デザインラボ代表理事で教育者の石田勝紀氏と、株式会社アートオブエデュケーション代表取締役で算数教育家、中学受験カウンセラーの安浪京子氏という2人のカリスマ教育者による2時間に渡るセミナーとなりました。キャンセル待ちが出るほどの盛況ぶりで、中学受験を控えたお子さんを持つ保護者のみなさんの関心の高さが伺われました。今回は、事前に参加者ひとりひとりが1枚ずつ付箋紙に質問を書いてボードに分類。セミナーの前半は成長期で多感な子どもに起きたさまざまな変化とその対応、勉強法などを実例を踏まえて紹介。後半は付箋に書かれた質問への回答を中心に進められました。現場をよく知る2人のテンポの良いトークと、実際に接している親子の実例を踏まえた解説に、熱心にメモを取る姿が見られました。アロマや書籍販売コーナー、協賛するライズTOKYOのマットレスや枕の体験コーナーもあり、休憩時間には大変な盛り上がりを見せていました。
子どもの来たるべき学力の急上昇に備えよ
会場に集まった方の多くが4、5、6年生の保護者。なかには3年生以下の親御様も数名いらっしゃいました。安浪氏は「学年によってすべきことが全く異なる」と前置きしたうえで、合格する子の特徴や基礎の大切さを説きました。肉体的、精神的な成熟度に応じて、子どもの心ややる気にゆらぎが生じることが受験勉強を難しくしている側面があるようです。ただし個人差があり、小学4年生ではまだわからないと安浪氏。反抗期の前か後かによっても違いがでるといいます。
「4年生ではさっぱり理解できなかったことが5年生で伸びるケースは多い。学力的な問題ではなく、成熟度の問題だったということもあるのです。」(安浪氏)
逆に、あまり手が掛からないと思っていた子が、6年生になって失速してしまった例も紹介しました。
「自発的に勉強ができて優秀すぎるレベルだった子が、あるときから受験しない子をうらやましがり、宿題も雑になったのです。保護者の方に話を聞いたら、ほかの科目でもそうだと。これは第二次成長期が来たなと思いました。でもそれを乗り越えてこその中学受験です。」(安浪氏)
また、エンジンのかかりが遅い子どもについては、
「6年生の今の時期でもまだ人ごと(笑) 6年生の男の子はお尻に火がつくのは12月末です!」の発言に、会場では笑いや深くうなずく姿が。このような子どもの変化に対応するためにもっとも大事なこととして安浪氏があげたのは、「基礎」の大切さでした。
「子どもが我がこととして受験をとらえ、やる気になったときに力を発揮できるよう、やれること、最低限のことをこなしていくことが大事です。中でも基礎は大事。基礎を軽んじて適当にやっている子は、最後の最後で崩れます。来たるべき学力の急上昇カーブに備えて、最低限のことを淡々とこなさせてください。」(安浪氏)
子どものタイプに応じたアプローチを
石田氏も、即実践しやすいノウハウを多数伝授してくださいました。子どもにやる気を起こさせるのは至難の業。そこで大事なのはタイプに応じたアプローチで、地頭(成熟)レベルに応じた学習、自己肯定感を高める声かけ、行動へのゲーム性の導入や、ゴールまでの見える化だといいます。石田氏によると、人間には大きく分けて「マルチタスク」と「シングルタスク」の2つのタイプがあるそうです。「マルチタスク」は何でもこなすけれど、気が散りやすく集中力に欠けるタイプ。判断基準は損か得かで無駄が嫌い。「シングルタスク」は1点集中で、集中力抜群なタイプ。集中して入っていく分まわりが見えず空気が読めないという側面もある、彼らの価値基準は好きか嫌いか。
「人間というのは、損得と好き嫌いの両方を持っています。10歳くらいまではシングルタスクの子が多く、お母さんがマルチタスクで子どもがシングルタスクという組合せはよくあるパターンです。ママが子どもに『今やっちゃいなさい。今やれば後で得なんだから!』でも子どもは嫌いだからやらない。以上おしまい!子どもは嫌いな部分はやらない。これがずっと続いてるのね。(笑) 一方で、マルチタスクは無駄が嫌いだから、方法論やスケジュール管理を教えると得するからはまります。これがアプローチの入り口。でもシングルタスクタイプは嫌いなものからやったら動かない。好きな部分から入って心が満たされたら、じゃあ他もやっていいかな?という構造をしています。嫌なことの中にもそれだったらやってもいいかなと思えることがあるはずなので、そういうところを見つけて手を付けさせると、歯車が周り出します。」(石田氏)
「マジックワード」言葉の持つパワーを使う
最近は言葉の重要性にも注目しているという石田氏は、日常的に使いがちな言葉の中に、自己肯定感を高める言葉と破壊する言葉があるといいます。子どもの自己肯定感を高めるための声かけが、保護者のメンタルにもプラスに作用すると説明。「『きちんとしなさい』『早くしなさい』『勉強しなさい』という3つの言葉を1回言うと偏差値が1下がると言われています (笑) 子どもに欠点が見えているというのは、お母さんの中にストレスが溜まってる証拠です。『すごいね、さすがだね、いいね、嬉しい』といった言葉をよく使っていると自分の耳でも聞くので、保護者自身の自己肯定感が上がるのですよ。すると子どものいい部分が見えてきます。それをまた言葉にすると、子どもは嬉しくなって心が動き出すという構造なのです」(石田氏)
安浪氏もまた、言葉の持つパワーに大いに共感していました。
さまざまな方法を実践するうえで、保護者側が気をつけたい意識にも触れました。それは親と子どもでは、生きている時代がまったく違うため、価値観も異なっているという点です。それは1つのデジタルデバイスの登場によってもたらされました。
「昭和世代は紙媒体に載っている人がすごいと思うけれど、今の子どもはオンラインに出ている人のほうが偉いと思っています。昭和世代は習い事に行きますが、今の子どもはオンラインの動画で学びます。iPhoneが登場した10年前から世の中が一変したのです。親と子どもの頭の中は価値観や学び方、触れるコンテンツが根本的に違います。これはものすごい変化。だから、自分の『させたい』がそもそも合っているのか考えてみる必要があります。」(石田氏)
セミナーに参加している保護者のほとんどが昭和世代だけに、深く考えさせられる一言でした。
ちゃんと寝る子は最後まで踏ん張れる
セミナー冒頭に、安浪氏は睡眠不足で成績が急降下した6年生の事例に触れました。最近どんどん成績が下がっており、夏休み明けの模試で最低偏差値をたたき出してしまったというのです。保護者に子どもの1日のスケジュールを聞くと、朝5時半から勉強をスタート、学校の後は夜9時まで塾で、帰宅するのは夜10時。11時半には寝かせたいと話されたそうです。
「えっ! 睡眠6時間ですか!? それは確実に睡眠不足ですっていう話をしました。親があれもこれもとどんどん詰め込んで『息子は全然やる気がないんです。』と言われますが、それはあたり前!詰め込みすぎだから、寝かせてあげてくださいと言いました。食と睡眠と親御さんの愛情が足りていないお宅では、低迷したまま本番を迎えてしまう子どももいます。小学生なので、脳も体も成長期。まずベースに健康的な生活がないと踏ん張れないのです。みなさん、どうかお子さんはちゃんと寝かせてください。」(安浪氏)
石田氏も、睡眠が重要だということはわかってはいても、おろそかにしてしまう部分がある。ただ、できる子たちは寝ています。だから四当五落は間違いだと締めくくりました。
健康睡眠ミニレクチャー 「ママのための眠育」
2回目となるミニレクチャーでは、RISE睡眠コンシェルジュの青野が子どもの睡眠教育を考える前に、まずはお母様ご自身の生活習慣を見直していただくことをご提案。日本人女性は、世界25ヶ国の中で一番睡眠時間が短い※というOECDの調査結果があります。さらに、女性は男性よりも睡眠負債を貯めやすいそうです。2つの要因があり、1つは、女性の社会進出やスマホの普及に伴う夜型化した生活といった社会学的要因です。もう1つは女性特有の生理学的要因で、月経や妊娠、出産、更年期障害まで一生を通して質の高い睡眠を阻害される要因が揃っています。対策は規則正しい生活習慣と、寝具マットレスを睡眠の質を高める効果の高い高反発タイプに見直すこと!お母様が心身ともに健康である上で、お子様へ「眠育」をしてあげて欲しいとお伝えしました。『毎日決まった時間に寝る』『暗い部屋で眠る』『ひとりで起きる』そしてもちろん『健康的な生活リズム(遊び・勉強・食事・睡眠)』です。できるものから、実践してみてください。
参考コンテンツ1 睡眠コンシェルジュ「女性は睡眠負債をためやすい?!」
https://corp.risetokyo.jp/project/concierge/1757
参考コンテンツ2 睡眠コンシェルジュ「新学期スタート!ママのための眠育」
https://corp.risetokyo.jp/project/concierge/945
21世紀型中学受験 モチベーションアップの3つの秘訣
第1回 「体の秘訣 睡眠の質が決め手~脳と香り~」 前編
第1回 「体の秘訣 睡眠の質が決め手~脳と香り~」 後編
第2回 「学の秘訣 親の関わり合い方と勉強法」
第3回 「心の秘訣 親子のメンタルと運の引き上げ方」
PROFILE 石田 勝紀
いしだかつのり/(一社)教育デザインラボ代表理事、都留文科大学国際教育学科特任教授。20歳で起業し、学習塾を創業、3500人以上の生徒に対し直接指導を行う。「心を高める」「生活習慣」「考える」の3つを柱にした指導で生徒の学力を引き上げる。2003年より横浜市教育委員会高校改革委員、文部科学省高校生留学支援金制度の座長を務め、生徒・保護者・教員を対象とした講演会も行う。2015年から東洋経済オンラインにて、「ぐんぐん伸びる子は何が違うの?」を隔週連載し、90回以上の長期人気連載となり累計5700万アクセスを超える。(2018/6/1時点) 2016 年からはカフェスタイル勉強会「ママカフェ」を主宰。全国での講演会、研修会、ママカフェの活動回数は年間150回を超える。経営学修士 (MBA)、教育学修士、 東京大学大学院教育学研究科博士課程在学中。
PROFILE 安浪 京子
やすなみきょうこ/算数教育家、中学受験専門カウンセラー、(株)アートオブエデュケーション代表取締役。神戸大学発達科学部卒業。関西、関東の中学受験専門大手進学塾にて算数講師を担当し授業アンケートでは100%の支持率を誇る。中学受験プロ家庭教師歴20年、きめ細かい指導とメンタルフォローをモットーに毎年多数の合格者を輩出している。2011年、中学受験算数を専門としたプロ家庭教師集団プレスティージュパートナー(アートオブエデュケーションの前身)を設立。「きょうこ先生」の愛称で、朝日小学生新聞やAERAKIDS、日経DUALなどで悩みに答えるほか、中学受験や算数に関する著書、連載、コラム、授業動画など多数。中学受験セミナーは毎回即満席となり、中学受験家庭を子どもと親の両側面からサポートしている。また、教育業界における女性起業家としてビジネス誌にも多数取り上げられている。