【全6回連載】自然のリズムを取り戻し、健康睡眠へ ~日本の統合医療の第一人者・山本竜隆医師が語る健康睡眠~ 第3回
第3回 睡眠と自然のリズム
健康的な生活を送るために必要な“質の高い睡眠・健康睡眠”には、寝具だけではなく、1日24時間の過ごし方をデザインすることが大切です。日本の統合医療の第一人者・山本竜隆医師によると、この1日24時間の過ごし方には、“自然のリズム”を取り入れることがとても大切だそうです。都会での暮らしはつい自然のリズムを忘れがちです。そこで山本医師がオススメする自然のリズムの取り戻し方をご紹介。全6回の第3回です。
東洋医学では人間の身体は自然界の一部であると考えています。つまり、人間にもともと備わっている体内リズムも自然のリズムのひとつ。今回は、この体内リズムと睡眠の深い関係についてご紹介します。
睡眠のリズム
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睡眠には、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」を交互に繰り返す、というリズムがあります。睡眠の前半に訪れるのは、ノンレム睡眠という深い睡眠。身体だけではなく脳まで休め、不必要な記憶の削除やストレスの消去などが行われます。レム睡眠は、後半に多く訪れる浅い睡眠で必要な記憶の固定などが行われます。身体を休めながらも、本能的に外敵に対応できるよう脳は起きているため、「原始的な眠り」と言われています。
正しいリズムの睡眠をとらないと、記憶力や思考力、認知力などの低下を招き、日常生活に支障がでてくることもあります。
では、どうすればこの睡眠を正しいリズムでとることができるのでしょう?
正しいリズムの睡眠をとる
ひとつ目は、睡眠時間。統計上は7時間が一番いいとされており、山本医師によると7時間を基準に少なくても多くても、いろんな病気になる確率が高まるそうです。例えば、高血圧になる確率も倍ぐらいの違いがあるとのこと。
ふたつ目は、睡眠をとる時間帯。現在、日本では長時間労働が問題になっていますが、それ以上にライフスタイルの変化で夜間勤務が増えていることが問題だと山本医師はおっしゃいます。夜間勤務の方は法律で年2回の健康診断を義務付けられています。なぜかというと、夜間勤務の方は圧倒的に病気になる方が多いからです。「“朝起きて、夜寝る”、それが動物として、人間としての本来の姿。自然のリズムに合っていない生活を送れば、身体に負担をかけ、病気になる可能性が高まります」と山本医師は危惧していらっしゃいました。
健康づくりのための睡眠指針
- 2014年、厚生労働省は『健康づくりのための睡眠指針』を出しました。その内容がこちらです。
1. 良い睡眠で、からだもこころも健康に。
2. 適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
3. 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
4. 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
5. 年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
6. 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
7. 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
8. 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
9. 熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
10. 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
11. いつもと違う睡眠には、要注意。
12. 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。
(出展:厚生労働省『健康づくりのための睡眠指針2014』)
ここで注目したいのが、睡眠時のことだけではなく日中の過ごし方についても触れていることです。特に第5条には「季節に応じて」、第7条には「体内時計のリズムを保つ」といった言葉もあり、自然のリズムを意識することが良い睡眠に繋がることを伝えています。
この機会に、“朝起きて、夜寝る”という本来の人間の姿や適度な睡眠時間といった体内リズムと、睡眠環境や自然のリズムを意識してみてはいかがでしょう?健康的な生活が手に入ります。
- 第1回~第3回で自然のリズムに合わせて生きることの大切さをお伝えしてきました。では具体的にどうしたら自然のリズムに合わせて生きることができるのでしょう?第4回は、山本医師にフォーカスを当て、リトリート、滞在・体感型施設である富士山静養園と日本初の滞在型ウェルネスリゾートである日月倶楽部を作るに至った経緯や今どのような生活を送っていらっしゃるのかについてご紹介します。
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